ジブリ映画通算18本目にあたる『コクリコ坂から』は、古いものを排除し、新しいものを取り入れようとする風潮の中で、ピュアな心を持つ高校生たちが何を守り、何を信じ、何を愛するのか、葛藤し懸命に生きていく様を描いた作品です。
非常に情緒豊かなストーリーと美しい画が目を奪う作品だけあって、その「声」にはかなりの期待がかけられていました。
そして起用されたのは、女優として実力を発揮している長澤まさみやV6でお馴染みの岡田准一でしたが、人々が期待したような成果は得られませんでした。
そこで今回は、『コクリコ坂から』に起用された声優が誰なのか、なぜイマイチだったのか、なぜそういう結果になったのかというところを検証していきます。
Contents
『コクリコ坂から』に起用された声優はプロの声優ではない?!
ジブリ映画だけではなく、洋画の日本語版声優なども最近プロの声優ではなく若手俳優、スター俳優、アイドルなどが起用されるケースが目立っています。
今回の『コクリコ坂から』でもプロの声優として活躍していない有名人(俳優、芸能人など)が多く起用されました。
・松崎海役 長澤まさみ
・風間俊役 岡田准一
・松崎良子 竹下景子
・北斗美樹 石田ゆり子
・小野寺善雄 内田剛志
・水沼史郎 風間俊介
・徳丸理事長 香川照之
・悠子 手嶌葵
声優陣の顔ぶれは豪華なものですが、確かにプロの声優ではありません。
しかし、演技力に定評がある長澤まさみであれば、声だけでも十分勝負できるのではと期待するのが我々一般人なのですが、今回は見事に裏切られる形になります。
あの長澤まさみももってしても棒読み台詞となってしまっていたことから、「『コクリコ坂から』の声優下手過ぎる!」とブーイングが飛んでしまったのです。
声優と俳優の仕事はそんなにも異なるものなのか、そのところ次で見ていきましょう。
『コクリコ坂から』声優が下手と言われる理由:声優と俳優の違いを知る
声優と俳優の違いは、声だけで演技をするのか、声と身体、目を使って演技するのかというところになります。
文字通りに解釈するならば、声優は声だけでしか演技ができないので俳優業は難しいかもしれない、しかし俳優は声だけで演技をする声優業をこなすことは決して難しいことではないだろうということになります。
しかし、声優と俳優できっちり職が分かれていることからも分かるように、それぞれに適性というものはありますし、それぞれに専門性があります。
例えばウェッブライターの方が、普段パソコンを良く使っているからという理由だけでITエンジニアの仕事に手を出せるでしょうか。
パソコンという繋がりが少しあるにせよ、手を出さない方が賢明であることは明白です。
声優と俳優もライターとエンジニアぐらいの違いがあり、本来であればそれぞれが決められた仕事のみを全うするのが望ましいのです。
つまり、「君は演技が得意なのだから、声だけ宜しく」と急に声優の仕事を振られた役者が期待されているほどの成果を出せなくてもなんら不思議はないのです。
『コクリコ坂から』声優が下手と言われる理由:声優の難しさ
声優は、当たり前ですが、声だけで全てを表現しなくてはいけません。
俳優のように目や手で何かを表現することは一切できません。
しかも、キャラクターを演じるとなれば、画でそのキャラクターが口を動かしている間しか話すことができません。
プロの声優として活動している人であれば、そのあたりの長さや間の取り方など心得もあるでしょう。
しかし、初めて声当てを担当する俳優にとっては、声の抑揚を付ける以前にキャラクターの口に合わせて話すという作業に苦労するはずです。
アニメーションの口の動きと音(声)がずれていることほど気持ち悪いことはないので、その点は監督含め、皆が一番気を遣うところでもあるでしょう。
その口合わせができて初めて、声のトーンを変えたり、声の中だけで演技したりできるようになるわけですが、ここにもまだ落とし穴があると言います。
日本の声優界のトップに君臨し、何百種類もの声色を自在に操ることができる声優の山寺宏一は声優の仕事に関して、「アニメーションの口の動きを見ながら感情をのせなければいけないので、どこか客観的でないといけない」とコメントしていました。
身体全体で表現する俳優が客観的に演技するというのはあまりないのではないでしょうか。
それゆえ、俳優が声優の仕事をする際に、キャラクターに感情移入し過ぎて、妙に力がこもった台詞になってしまい、NGを出してしまうことも多いと聞きます。
アニメーションの口の動きから外れてはいけない、変に声を張り上げてはいけないということを考えながら声優の仕事をすれば、無意識的に棒読みのようになってしまうのも仕方のないことなのかもしれません。
そうなってくると、この結果が分かっていたにも関わらずプロの声優ではなく俳優を起用したキャスティングの人に問題があると言えるのかもしれません。
-
-
「コクリコ坂から」映画と原作の違いは?それぞれの内容を比較・解説
1960年代の日本の港町を舞台に、高校生の少女と少年の恋を切なく描いたジブリアニメ「コクリコ坂から」。 近年のジブリ映画の中でも特に人気が高いこの作品ですが、実は原作となった漫画があります。 「コクリ ...
『コクリコ坂から』の声優だけが下手ではない?!酷評された声優陣
ジブリ映画において、特に『コクリコ坂から』の声優陣が下手だという話をよく耳にしますが、『コクリコ坂から』以前からもプロの声優ではない俳優やアイドルが声当てをして酷評された過去があります。
・『ハウルの動く城』よりハウル役 木村拓哉
・『風立ちぬ』より堀越二郎役 庵野秀明
・『となりのトトロ』より草壁タツオ役 糸井重里
の3人は今なお良くなかったと酷評されています。
下手と猛バッシングされてもプロの声優ではなく俳優やアイドル、芸能人が起用される訳
中学生の時初めて『耳をすませば』をみた。その時聖司くんがかっこよすぎて恋に落ちた。でも今は風間くんのが好きだな〜コクリコ坂は毎回泣いてしまう。お父さんに夢の中で会えるシーンも『ずーっと好き』って言う所も、お母さんの前で声を上げて泣く所も最後の立花さんからの言葉も。好き。 pic.twitter.com/XpNHHm4rLP
— mint (@taebaekseullee) August 21, 2020
何度となく「プロの声優を使うべきだ!」という意見が四方八方から飛んできているにも関わらず、ジブリ映画では必ず旬な俳優、アイドル、芸能人が声優として起用される傾向にあります。
アニメにおいては、声一つでそのキャラクターが生きるか死ぬかという大事な要素だけにやはりプロの声優を起用すべきではあるでしょう。
それでもプロの声優がなかなか起用されないのには二つ理由があると考えられます。
プロ声優は引っ張りだこで超多忙!
第一にプロの声優を起用するに当たって、スケジュール管理が難しいことが挙げられます。
第一線で活躍する声優はやはり引っ張りだこなので、ジブリ側のスケジュールに合わせてもらうのが難しいというのがあるようです。
特に会話の台詞シーンは片一方ずつ台詞を収録するのではなく、まとめて収録するのが望ましいため、よりスケジュール調整が難しいと言います。
それゆえ、スケジュールの融通がきく俳優やアイドルを起用することが増えているようです。
やはりネームバリューや話題性も必要
第二にその映画の宣伝効果として旬の俳優やアイドルを起用する傾向にあることが挙げられます。
ジブリというブランドであっても、初公開映画を宣伝するに当たって、俳優やアイドルの名前を借りて、宣伝効果をアップさせたいと考えるのは当然と言えば当然でしょう。
どんなに「俳優が声優やってもダメなんだよね」と思っている人でも、俳優やアイドルの名前を目にして「今度のジブリはこの俳優が声をやるのか」と一度は注目してしまうものです。
話題性を狙うにしても、俳優やアイドルの起用は宣伝に欠かせないのです。
-
-
コクリコ坂からのその後。海と俊の2人はどうなったのか?
1963年の横浜が舞台になった、「コクリコ坂から」。当時は戦争が終えて18年目に差し掛かっていたので、日本の経済も回復途中の真っ只中でした。翌年にはオリンピックも控える日本。 主人公は、松崎海(まつざ ...
『コクリコ坂から』の声優陣は下手って本当?おわりに
いかがでしたでしょうか。
俳優なら何でもできるだろうと考えてしまいがちですが、声優と俳優は専門性が違うので、急に俳優が声優の仕事をすることになっても、俳優業のように100パーセントの力はまず発揮できないでしょう。
しかし、ジブリ映画は内容が良いものが多いだけに、声優もプロを揃えて欲しいという気持ちは多くの人が抱いています。
プロの声優をしっかり起用できる体制を事前に整え、次回のジブリ映画ではプロ声優による声当てが実現することを期待したいところです。