小人の少女アリエッティと、彼女が出会った人間の少年の交流を描いたジブリ映画「借りぐらしのアリエッティ」。
独特の世界観をまとった内容で、ジブリ作品の中でもユニークな一作として知られていますね。
そんな「借りぐらしのアリエッティ」の見どころを解説して、評価や考察をまとめました。
Contents
2010年公開のジブリ映画「借りぐらしのアリエッティ」
「借りぐらしのアリエッティ」は、2010年のジブリ映画として公開された作品です。
原作はメアリー・ノートンによる児童文学・小人の冒険シリーズの1作目「床下の小人たち」。
この作品に宮崎駿らが独自の脚色を加えて脚本を手がけました。
監督を務めたのは、現在はスタジオポノックを設立して独立し、
「メアリと魔女の花」などを手がけている米林宏昌。
それまでのジブリ映画としては珍しく、宮崎駿でも高畑勲でもない人物が監督した作品です。
(承前)そして再来週8/28の日本テレビ「金曜ロードSHOW!」は、映画『借りぐらしのアリエッティ』。原作のメアリー・ノートン『床下の小人たち』( https://t.co/MIsLck0sAC )とあわせてお楽しみください。
— 岩波書店 (@Iwanamishoten) August 14, 2020
「借りぐらしのアリエッティ」のあらすじネタバレ
主人公は、小人族の少女アリエッティ。
アリエッティとその両親は、人間の屋敷の床下に自分たちの住みかを作り、
人間の持ち物をこっそり借りてきて使う「借りぐらし」を行っていました。
ある日、アリエッティは「借り」の最中に、屋敷に住む少年・翔(しょう)に姿を目撃され、
ひそかに交流するようになります。
ところが、小人と人間という立場の違いから2人の考えはすれ違い、
さらに屋敷の家政婦ハルが小人族の存在に気づいてしまったため、
アリエッティたちは屋敷を去ることになります。
引っ越しの前、アリエッティが最後に翔の前に姿を現すと、
翔は「自分は心臓が弱く、手術を受けるがきっと死んでしまう」と打ち明けるのでした。
別れ際、翔は角砂糖を、アリエッティは髪留めにしていた洗濯バサミを相手に贈り、
アリエッティたち一家は去っていきます。
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「借りぐらしのアリエッティ」の見どころを評価・考察
アリエッティたちの「借りぐらし」の様子に惹き込まれる
「借りぐらしのアリエッティ」で特に印象的なのが、
緻密に描かれる「借りぐらし」の描写ではないでしょうか。
アリエッティたちから見たら、人間の道具はすべてが巨大です。
それを巧みに使い、意外なアイデアを駆使して生活を成り立たせている描写は、
なんだかワクワクさせられますね。
ジブリスイッチ入ってしまった
この前初めてアリエッティ最後まで見たらほんとに面白かった
でも物語とは別に借りぐらしの生活
私もした過ぎたし、何よりも
お部屋のセンスがありすぎる
私ももっとセンス磨こう— (@Rabit_0109) April 13, 2020
小人と人間の交流を通して描かれる「生きる」というテーマ
原作小説は小人族の冒険がメインになっていますが、
ジブリ映画版では「生きる」ということをテーマにした人間ドラマ色が強くなっているのが特徴です。
アリエッティたちの「屋敷を引っ越してでも生きなければいけない」という決意。
そして翔の「命に関わる心臓病を抱えている」という境遇。
アリエッティと翔が劇中で交わすシリアスな会話も合わさって、
さまざまな面から「生きる」ことを考えさせられます。
翔はどうなった?心臓の手術は成功した?
「借りぐらしのアリエッティ」を観た人たちの中で語られてきたのが、
「翔は結局どうなったの?」という疑問です。
翔のその後については、生存説と死亡説の両方があります。
生存説の根拠としては、
「映画そのものが翔の回想(あの夏の思い出)というかたちで描かれている」
「ファミリー向けのジブリ映画で死亡バッドエンドは考えたくない」
といったものが有力です。
一方で、死亡説の根拠としては、
「ストーリーが”生きる希望を持つアリエッティ”と”自分の運命を悲観する翔”の対比になっている」
「翔の別れ際の言葉”君は僕の心臓の一部だ”が死亡フラグになっている」
「翔は最後に角砂糖(消えるもの)を贈り、アリエッティは洗濯バサミ(残るもの)を贈ったのが象徴になっている」
といったものがあります。
私ですね…借りぐらしのアリエッティの翔さんが大っっ好きなんです… pic.twitter.com/vLF3GvYeLN
— える (@Eru0324s) July 15, 2020
「借りぐらしのアリエッティ」の一般的な評価は?賛否両論?
「借りぐらしのアリエッティ」は、ジブリ映画では珍しく、
賛否両論がはっきり分かれる傾向にある作品です。
それぞれの意見はどのようなものになっているのでしょうか。
あっさりとした作風が「浅い」「物足りない」という声も
「借りぐらしのアリエッティ」を評価しない理由としては、
その内容が「浅い」「物足りない」という声が多くなっています。
確かに、物語にはあまり大きな起伏はなく、
アリエッティと翔の交流もわりとあっさりしたものです。
その分、ちょっとした背景描写や会話、音の演出などにテーマが象徴的に盛り込まれているのが「借りぐらしのアリエッティ」の持ち味ですが、
はっきりと分かりやすい盛り上がりどころを期待して観た方にとっては、
満足感を得られない内容だったのかもしれません。
ひとつのファミリー向けアニメ映画としては高評価?
一方で、「借りぐらしのアリエッティ」を高評価する声の中には、
純粋に「ファミリー向けアニメ映画として面白い」という意見が多く見られます。
アリエッティたちの借りぐらしの描写や、そこから想像できる小人族の生活。
シンプルであっさりしている分、子どもたちも受け止めやすいストーリー。
こうしたポイントから生まれる世界観そのものの魅力が、
ひとつのエンタメ作品として評価された要因ではないでしょうか。
『借りぐらしのアリエッティ』リアルとファンタジーが融け合ったこの世界観が好き。「かり」は「狩り」ではなく「借り」。翔とアリエッティが心を通わせていく過程にじんわり。ジブリの中で上位に入る!また好きな作品が1つ増えた。 pic.twitter.com/AProSizj6q
— アリエッティと翔 (@arietthe) August 20, 2020
まとめ:「借りぐらしのアリエッティ」は繊細で味わい深い作品
賛否両論がある「借りぐらしのアリエッティ」ですが、
「小人と人間の交流」というユニークな世界観や、「生きる」というテーマを描くストーリーは、
ひとつのアニメ映画として間違いなくハイクオリティです。
その内容は一見あっさりしていますが、
繊細な描写の中に、味わい深いメッセージが込められています。
さまざまな評価や考察に触れた上で、あらためて「借りぐらしのアリエッティ」を観てみると、
新しい発見があるかもしれませんよ。